ITコンサル系・若手向け英語研修の紹介

ビジネス英語はとらえかたひとつで守備範囲は広くも狭くもなります。学校、とりわけ大学をはじめとする高等教育で学ぶ自然科学、人文科学、社会科学がビジネス界では教養として引き継がれ、これに個人の趣向や関心が加わり、さらに、もっともビジネス英語のイメージに近い、業界・自社・取引先が関わる上で必要な英語が続きます。IT系コンサルのように、様々な業種と関わり合うケースでは、扱う英語をあまり限定せず、学習者本人の関心、必要性と照らし合わせながら英語学習をカスタマイズしていくことが肝要です。


 

目次

 
 

1.相談内容

「昨今自動翻訳をはじめとするAIツールの台頭により、若い世代が書く英文の質は、AI以前の時代よりも各段に向上しているようだ。一方で、彼らが書く英文が、AI丸投げによるものなのか、彼ら自身の校正を経てできたものなのかを見分けることができない。また、遠隔会議では、メールをはじめとするライティングコミュニケーションの質と、オーラルコミュニケーションの質のギャップがAI以前の時代よりもかなり大きくなっているのも懸念事項。純粋な英語教育というよりも、AI使用を前提とした、AIリテラシー向上を図るような英語研修はできないものか?」

このような相談を受けたので、当方からは3つ提案しました。

❶ 英語コミュニケーションの大元となる日本語の精度の探求

英文ライティングの指導をしていて実感するのは、大概わかりにくい英文は、元となる日本語が未整理である場合が多いということです。一方、日本語で論理展開マップを作成していただいてから作成する英文は、非常にわかりやすいものに仕上がります。こうしたことから、英文の元になる日本語の検証を重視します。オールイングリッシュにありがちな、「雰囲気でなんとなくわかったつもりに終わる」を極力回避します。

❷ 言語コミュニケーションの限界

対面コミュニケーションでは、言語以外の、ジェスチャー、表情、態度のような非言語的要素も見過ごせません。たとえば複数のグループでディスカッションをしていただくことがよくあるのですが、身体の向きが、円座になっているチームは、そうでないチームより議論が盛り上がりやすい傾向を垣間見たりします。ただ、これはあくまで個人の感覚に依拠することなので、講師が絶対的正解を「教える」のではなく、実際の身体体験を通して、各自にとっての納得解を自然に見つけていただくようにしています。

❸ 迅速なスピーキング能力の鍛錬

自動翻訳をはじめとするAIツールにより、ライティングの質は以前よりも驚異的に向上していることを実感中です。一方、変わらないのが準備のない即興スピーキングです。しかし、ライティングによって言いたいことが一度言語化された後であれば、辞書や原稿に過度に依存することなく、なんとか手探りで話していくことは可能なようです。日々の研修では、自学ベースのライティングと、対面クラスでのスピーキングを並行実施していますが、AI前時代に比べると、やはりスピーキングの成長スピードも加速している実感があります。昨今のスピーキング成長スピードを図にするとこんな感じになります。

2.研修概要

・対象:

入社2~5年目の若手社員を対象としました。変化が目まぐるしい時代において、この層が担う役割はことのほか重要です。まずこの層の意識レベルが後々入社する新入社員の質に影響を強く与えます。また彼らは、新入社員と中堅社員との橋渡し的役割も担っています。
 
この世代は入社後、コロナ禍でほとんどリアルな対人コミュニケーションが体験できなかったこともあり、テキストベースではない、生の対人コミュニケーションにも課題を抱えています。

・期間:

英語上級者の共通点として、人生の一時期、集中して学んだということが挙げられます。万年初中級で、気が付くと10年、20年経っていたというような事態はビジネスでは回避しなければなりません。こうしたことから、隔週1回3時間×8週の4か月(24時間)に設定しました。若手とはいえ、多忙なビジネスパーソンであることには変わりません。

スピーキングに比重を置いているため、研修時のアウトプットは当然のこととして、日常的なアウトプットを重視し、研修終了後のセルフメンテナンスにも力を入れました。

・ゴール:

AIが生成する英文を校正するだけの文法力・読解力、オーラルコミュニケーション対応力の前提として、TOEIC700点を最低目標に掲げました。

・内容:

リスニングとリーディングは市販のTOEIC教材を使い、実際のコミュニケーションでの、英文の読み進め方、英語の聞き方を学びます。テストオタクやスコアチェイサーを養うのではなく、あくまでも押しの強い外国人と対等に渡り合っていく上で必要な受信力、ビジネス遂行に必要な海外情報の消化を目指したL・Rトレーニングを提供し、その先に結果としてのTOEICスコアアップをイメージしていただきます。

昨今、LRWは割と自己学習でカバーできるのに対して、相手を必要とするスピーキングだけはどうしてもリアル対面のトレーニングが必要です。したがって、研修時間の6割以上をスピーキングに宛がっています。しかし、研修時のスピーキングのウエイトが上がれば上がるほど、研修終了後の練習不足という事後課題も浮上しますので、話す相手がいない平時用のセルフトレーニングも体験いただきました。

IT系をはじめとする、理系寄り人材の大きな特徴は、【好きな事、関心事への傾倒の強さ】にあります。卑近な例を挙げますと、たとえば全員均一に、【好きな食べ物】というライティング課題を提供したとします。元々食への関心が高い社員はそれなりの熱量の高い英文を生み出すのに対して、そうでない社員は、明らかに【仕方なく書かされている】感のある英文を書きます。一方、大まかなライティング作法をあらかじめ指導した上で、テーマを自由にすると、指定文字数を大幅に超えるような、熱量の高い英文を提出してきます。昨今の言葉を借りるならば、【”推し”の英文ライティング】といったところでしょうか。前者と後者の違いは、「書かなければならない」か「書かずにはいられない」の違いであり、この違いは非常に大きいです。

 

実際、著者も自ら、【”推し”の英文ライティング】として、ブックレビューを英語で作り、SNSに投稿したり、動画投稿しています。

【”推し”の英文ライティングの実践例:英文でブックレビュー】

当然ながら、英文によるブックレビューは上級者向けのトレーニングであるため、中上級者には、ひとまず日本語でのブックレビューや【推し語り】をしてもらうようにしました。皆さん自分が大好きなことを語っていただくのですから、自然と発話量も多くなり、かつ、積極的な質疑応答も展開できました。著者自身も、いきなり英語で語るのではなく、まずは日本語でのブックレビューから始め、段階的に英語に移行するようにしています。やはり元々のOSが日本語なので、日本語で言いたいことを出し切ったあと、それらを再編集、要約する目的で、英語を取り込むのがムリがないようです。

【ひとまず日本語でブックレビューしてから、気分次第で英文化】

ただ、専門性の高い領域でのライティングの場合、当該領域に詳しくない人にでも理解できるように説明する必要がありますので、原則、和訳とセットで提出してもらっています。また、論理的思考はグローバルビジネスの共通語でもあるため、ライティングにおいては、自分自身で校正・編集できるようなセルフチェックリストを用意しています。これにより、他者に頼らず、ある程度完成度の高い英文を作ることができるようになります。こうしたセルフチェックリストには、なるべく学習者自らがチェックできるような道筋を作り、教師をはじめ第三者による指導・修正の必要性を極力抑制して、業務効率を高める狙いがあります。

 

元来英語が好きと言うのでもない限り、他者が作った英文を丸暗記することに対しては、あまり熱意を示さない学習者も相当数います(何より著者がその一人です)。そこで、市販教材の英文の音読や暗記に代わるトレーニングとして、同英文のパラフレーズ(言い換え)トレーニングを行いました。これは、ゼロから英文を考えるよりもハードルが低く、かつ、完成文の暗記という退屈さも回避できるため、比較的積極的に取り組んでいただけたようです。

【パラフレーズ(言い換え)ガイド動画】

・効果測定:

受信力(リスニング・リーディング)はTOEICで、発信力は日英併用でエッセイを書いていただきました。なお、ライティングにおいて、最後はご自身で校正していただくことを条件に、自動翻訳の部分的使用は認めました。また、思考の解像度を上げるため、箇条書きやパワーポイントによる簡易なまとめ方ではなく、しっかり文章で書いていただきました。

今回のケースは、特にAIの使用について制約はなかったため、むしろ積極的に使っていただき、自動翻訳が生成した英文がもたらすリスクについても受講者と議論を交わしました。その際、受講者自身が自動翻訳の失敗体験談を持っていると、議論がとても建設的かつ実践的なものになります。

【思考の解像度と文章の関係~Amazonに学ぶ】

【ライティングの基本ガイドライン】

TOEICを効果測定として使うにあたり、このテストが実務にどのように関係し、かた貢献していくのかについても社員間でディスカッションしていただき、業務を含め、自分達がやることに自ら意義を探ることも体験いただきました。

【なぜTOEICを受験するのか、その意義についての動画】

・お客様からのフィードバック:

自動翻訳は確かに便利なのですが、誤訳という負の側面はどれだけ社員間で共有できるのかが懸念事項でしたが、少なくとも研修を受けた社員間では、自動翻訳をはじめとするAIとの適切な距離感覚は共有できことは、企業側の安心につながってようです。一方、自学文化の浸透については、未知数であるため、強制による【やらされ感】ではなく、いかに各自が自分自身で好奇心を絶やさずに発信練習を続けていく必要性を指摘いただきました。

・今後の展開:

少し実務期間を置いて、半日程度のレビューセッションを設定する予定です。ここで研修・自己学習・現場3つの学び場の統合を図ります。これを行わないと、「研修で学んだことが、実地では忘れられてしまう」というリスクが懸念されますので。

 

3.お勧め教材

以上、実際の研修事例をご案内しました。ここで自学副教材として並行利用した通信講座をご案内します。通信講座の魅力は、研修運営側に一切のオペレーションの負担がかからないことです。一方、社員側にとっては、自分のペースで進められること。ただ、通信講座や自学用アプリ共通の課題として、自学のペース配分がわからなくなったり、実際の英語運用とイメージが結びつかないことが挙げられます。上記の研修では、通信講座の添削課題提出期限を研修時にリマインドしたり、社員が実務上で直面したコミュニケーション課題を取り上げ、通信講座教材の一部分を関連させて講義するなどして、活用率の向上に努めました。

 

下記通信講座が扱っているプレゼンとネゴシエーションは、ビジネスパーソンにとっては、高難度かつ高汎用性スキルに属するものと言えます。これを可塑性の高い新入社員時代に身に付けさせておくことで、社員はさらなる自己研鑽や実践の場を求めることになり、日々のビジネスは、こうしたスキル発揮の場としての意味合いを帯びることになり、社員の成長モチベーションにも大きく寄与することになります。

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

4.研修実績

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