ビジネス英語力の強化・強靭化

御社が社員に身に着けてもらいたいのはビジネス力ですか?英会話力ですか?
 
おそらく、ビジネスに支障がなければ、わざわざ英語を学ばせる必要はないでしょう。その一方で、多忙な社員に英語を学習してもらったり、TOEICなどの規定スコアに到達してもらうには相応の事情があるはずです。TOEICスコアであれ流暢なスピーキング力であれ、ビジネス遂行の支援ツールに過ぎません。どうせ社員の貴重な時間を注いでいただくのであれば、実務遂行を後押しするような英語力でありたいものです。「ある程度なら英語はなんとか話せる」という社員はそれなりにいる。今回はそこから一歩踏み出して、「英語でビジネスコミュニケーションを遂行する」というレベルにまで、その英語を「強化」「強靭化」することがテーマです。
 

目次

1.なぜ今、「ビジネス英語力の強靭化」なのか?

コミュニケーションについて考える際、言語を英語にするとぼやけてしまいがちなことも、日本語に置き換えるとクリアになることがよくあります。たとえば日本語コミュニケーションの課題を掘り下げるとき、「日本語の語彙力が足りないから、語彙力を増やす」と考える人、「言葉をうまく組みたてられないから、まずは文法力を特訓」と考える人はあまりいないでしょう。おそらくもっと本質的なことに目が向かうはずです。たとえば「皆と違う意見が言えない会議の空気」「咄嗟に意見をまとめられる即興力が足りない」「背景知識の説明が抜けてしまうために、相手の納得が得られない」「今日的な業界トピックにキャッチアップしないと、全く議論に入っていけない」といったことですね。

 

ビジネス英語も本質的には、これらの課題と基本的には同じです。英語そのものの知識不足を出発点とした「語彙力増強」や「文法力のブラッシュアップ」にばかり意識が向かっている間は、コミュニケーションの課題の突破口は見つかりません。

 

そこでこれから必要になってくるのが、「強靭化」という発想です。つまり、英語力があるか否か、という知識的な検証とは別次元で、「元々ある語彙や文法をコミュニケーションにうまく連動させられるか?」という検証が重要になってくるということです。つまり、「英語力の強靭化」とは、単なる知識の多寡に留まらず、現時点の語彙力・文法力を駆使して、ビジネスコミュニケーション本来のゴールである、「相手への説得」「持論展開」「相互理解」「関係者各位との連携・稼働」につなげられる英語力を磨くということです。

2.  英語が英語以外の世界共通言語を引き寄せる!?

日本企業で英語力を論じる際、「そもそも英語を使う機会が少ないので、学習モチベーションが上がらない」という長年くすぶり続けている大きな課題があります。

しかし、著者は、日本人が英語に無関心であることには、単に英語が使えるかどうかという領域にとどまらず、英語以外の世界共通言語への意識がなかなか覚醒しない、という英語云々以上に深刻な課題が潜んでいると考えます。

英語以外の世界共通言語とは何でしょうか?

 

まず産業界全体で言えば、「経済安全保障」や「セキュリティクリアランス」「サイバーセキュリティ」といった世界共通の認識フレームなどが考えられるでしょう。「英語そのものには関心はないが、こうした世界経済の根底にある共通思考フレームには勉強熱心なビジネスパーソン・経営幹部が日本には圧倒的に多い」というのであれば、それほど日本経済を案じることもないかもしれません。しかしながら、こうした世界経済の潮流に敏感であることと、英語にオープンマインドであることには一定の相関性があるように個人的には思えてなりません。

【日本の経済安全保障を日本語・英語で考えてみる】

【セキュリティクリアランスについて日本語・英語で考えてみる】

【サイバーセキュリティについて日本語・英語で考えてみる】

業界を製造業界に絞って見ていきます。

YouTube登録者数26万人を超える製造業界で著名な「ものづくり太郎」氏の「日本メーカー超進化論」(KADOKAWA刊)から以下抜粋してみました。

●2023年5月にMM総研が実施した「日米企業におけるChat GPT利用動向調査」では、アメリカの企業の従業員の51%がChat GPTを利用しているのに対して、日本の企業の従業員は7%しか利用していない、という結果。(同書:159~150ページ)

●Confinity-Xの存在を知らなかったり、要件定義を理解していなかったりすれば、理にかなった競争機会を失ってしまいます。世界に目を向けずにいれば、最新の技術を取り入れなれないだけでなく、ビジネスチャンスを逃すことにもなるのです。(同書:156―157ページ)

ちなみにConfinity-XとはドイツのBMW、Mercedes-Benz,、Volkswagen、Siemensなど10社が共同設立したコンソーシアムです。(同書:154ページ)

世界の経済フレームや技術的動向にアンテナを向けつつ。それらについて国内外の識者と活発な議論や情報交換を行うための、共通言語を持つ。これも英語力強靭化が目指すところです。

3.AIによる英語学習の最適化

先述のような英語以外の世界共通言語のキャッチアップにオープンマインドなビジネスパーソンの場合、そちらのキャッチアップに忙しく、なおさら英語など勉強している暇などなくなってしまうこともあるかもしれません。

そんな多忙な社員もAIを味方につけることで、英語学習を最短化していくことが可能です。AIを英語学習に取り込む際、この「学習の時短」と、AIではカバーしきれない話す力の鍛錬という2つの側面を意識するとよいでしょう。前者のケースとして代表的なスキルがライティングです。発信したい内容を日本語にまとめあげ、それをGoogle翻訳にかければ、秒速で英語化できます。もちろんAIが生成する英文は必ずしも日本語の意図を100%反映しているとは限りませんし、明らかな誤訳もありますので、そのあとの人間の手による校正というステップは絶対に欠かせません。しかし機械翻訳語の人的チェックや編集を加味しても、従来のようにゼロから英語で何かを書くことに比べると、作業時間は大幅に減少しているメリットは計り知れません。

【AIによるライティングの時短~読んだ本を即英語でレビュー】

 

ただ、このようにAIツールによりライティングの仕事が質量ともに大幅に向上しますと、実際に対面で話す時のスピーキング力との落差がこれまで以上に顕著になります。つまり、劇的に進化するライティングによって肥大化するスピーキングとの落差をいかにして埋めていくかが今日的英語学習課題と言えます。以下に、毎日英語が話せるようになる魔法フレーズを動画で紹介しておきます。

【AIではカバーしきれないスピーキングは魔法のフレーズで】

 

4.体験のブラックボックスを活用する

筆者はAI活用を前提として、パソコンを使ったライティングを自学課題に据えつつ、対面コミュニケ―ションが可能な教室ではスピーキングに比重を置いた研修を展開中です。そこで露呈されることは主に2つあり、ひとつは大学受験で培った豊富な知識と、それを使って話すことの大きなギャップ。もうひとつはAIツールで大幅に質が向上したライティングと即興スピーキングの大きなギャップです。このギャップはさらなる単語や文法学習といった知識系学習ではなかなか埋まりません。アウトプット力の課題はあくまでも実際に話すことでしか解消されていきません。最初は、思うように言葉が出てこないストレスに直面しますが、これが以下のようなルートを通って、着実に英語力が強靭化されていきます。最終的に受講者は、単にペラペラ話せるという次元から、戦略的にコミュニケーションを展開し、最終的な目的を話す、という次元へと成長していきます。

【発信から始まる英語力強靭化のステップとループ】

以上を図にすると上記のようになります。しかし実際のところ、この成長過程は実際に体験した本人でなければわからないものです。講師ができるのは上記イラストのような道筋を提供することであり、実際に化学変化を起こし、その成果を享受するのは学習者本人です。つまり学習者の成長には、体験というブラックボックスが必要であり、教育機会提供者は、あとは学習者本人、学習者同士の化学反応に任せるのが最善のように思います。

この体験のブラックボックスは、あまり講師側が色々と先回りしないことが基本ですが、それでも多少の軌道修正は必要です。たとえば複数のグループディスカッションを観察し、極端に苦戦している班を見つけたら、メンバーを入れ替えてみたり、時に、活発な議論の呼び水として、日本語ディスカッションの時間を取り入れてみたりすることです。他にも、なかなか発言できないメンバーには、発言の出だしフレーズを投入したり、記録係という役割の存在を喚起することもあります。ただし、あくまでも先に体験をさせて、本人が不便や不快を訴えた場合に限ってのことであり、講師が先回りしてヘルプすることは控えます。

いずれにせよ、講師がすべてをコントロールするのではなく、まずは彼ら自身の主体性に任せる前提で、必要に応じて講師も調整の手を入れるぐらいに留め、「体験のブラックボックス」への外部からの干渉を最小限にとどめておくのが、発信演習の肝と言えます。

5.丁々発止レベルのスピーキングにお勧めな教材

ここで自学副教材として並行利用した通信講座をご案内します。通信講座の魅力は、研修運営側に一切のオペレーションの負担がかからないことです。一方、社員側にとっては、自分のペースで進められること。ただ、通信講座や自学用アプリ共通の課題として、自学のペース配分がわからなくなったり、実際の英語運用とイメージが結びつかないことが挙げられます。上記の研修では、通信講座の添削課題提出期限を研修時にリマインドしたり、社員が実務上で直面したコミュニケーション課題を取り上げ、通信講座教材の一部分を関連させて講義するなどして、活用率の向上に努めました。

 

下記通信講座が扱っているプレゼンとネゴシエーションは、ビジネスパーソンにとっては、高難度かつ高汎用性スキルに属するものと言えます。これを可塑性の高い新入社員時代に身に付けさせておくことで、社員はさらなる自己研鑽や実践の場を求めることになり、日々のビジネスは、こうしたスキル発揮の場としての意味合いを帯びることになり、社員の成長モチベーションにも大きく寄与することになります。

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

6.研修実績

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